
新しい職場に勤める上で気になる要素の1つである評価制度。世の中の「転職理由ランキング」などを見ると常に「給料が低い」「上司・経営者が気に入らない」「昇進・昇格に不満」などが上位に入っているので、これらに直結する「人事評価制度」に対して関心のある方は多くいると思います。
人事評価制度は会社によってさまざまで、社員の行動や成果を細やかに記録して判定するところもあれば、制度と呼べるようなルール・仕組みがなく、「上司・経営者に気に入られている」「たくさん残業をした」「頑張っているように見えた」などの、本来の能力や成果とは異なる恣意的な判断によって、最終的な評価が決まる会社も多くあると聞きます。
そこで今回は、幸信電気の人事部に、幸信電気の人事評価制度について詳しく話してもらいました。
建設業界はドンブリ評価が多い
ー建設業界の人事評価制度の実情を教えてください。
正直なところ、建設業界の中で人事評価制度が整っている会社は少ない、と感じております。
人事評価制度の話をする前に、まず建設業界全体の現状をお伝えしたいのですが、業界内ではおかげさまで需要が増えているのですが、施工管理技士が不足しています。また若手が特に顕著なのですが、業界通しての離職率が高いことも挙げられます。高卒の若者が建設業に就職し、3年目までに離職する確率は毎年30%~50%を推移しております。
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ーなぜ離職率が高いのでしょう?
労働環境によるものが多いと考えています。時代を遡ると、「失われた10年(1990年代)」に起因する不景気から建設業界全体で採用の抑制が行われ、2000年代半ばまでそれは続きました。バブル期は「大量採用」が当たり前であったため、各社の年齢ピラミッドが大きく崩れ、若手とベテランの年齢差が大きくなっていき、それがマネジメントに影響を与え、「若手が入り辛い環境」が出来上がっていったのです。
業界の特徴として100人以下の中小企業が多、経営規模が小さいことから目の前の業績を追いかけることに必死になってしまいがちで、若手社員の教育や定着に割くリソースが少なかったことも影響があると思います。
弊社は10人前後の中小建設企業ですが、こういった業界の常識を打ち破りたいと考えており、様々な施策を打っています。いくつかの施策の中でも、人事評価制度はとても大事な取り組みであり、社員に安心して働き続けてもらうために必要な仕組みだと考えています。
幸信電気ならではの人事評価
ー幸信電気の人事評価制度について教えてください。
幸信電気の人事評価制度の大きな特徴は主に4点です。
- 定量評価を主体としている。
- 新人〜若手とベテランで評価制度が異なる。
- 新人〜若手は場合は16項目評価を採用。
- ベテランは上長相談のもと、自ら目標を定める。
人事評価制度で大切にしているのは、「何を努力すれば良いのかを可視化させること」。そのため新人は「基礎的項目を一つずつクリアしていけば順調に給与が上がる」組みになっており、ベテランの場合は、「事前に上長と一緒に定めた目標の達成度」を測る仕組みとしています。

幸信電気ならではの人事評価
ー新人〜若手の評価制度に関して詳しく教えてください。
新人~若手はまだ一人で明確な成果が出せる段階にはないため、成果以外の点で評価をする仕組みになっています。なるべく明確に評価をするために、基礎的項目を8項目×2段階の16項目として定義し、その指標に合わせて評価を行っています。
・知識
・思考/コミュニケーション
・主体性
・積極性
・信頼
・問題処理
・マナー
・計画性
実際の評価のシーンでよくある問題は、上長が部下に対して、「もっと仕事できるようになってね」という、単に上司視点からの「コメント・アドバイス」にとどまってしまうことです。これでは、部下は「親身になって自分の成長を考えてくれている」とは感じられませんし、離職の遠因ともなり得ます。上記の8カテゴリを利用した場合、例えば「主体性」のところであれば次のような評価がなされることがあります。
「自分から進んでわからないことを質問することはできている。だが、求めるレベルは「相談」ができるようになること。代理人は自分が最終責任者という思いをもって、「自分の考え」を常に持っていなければいけない。」このような感じで、どのレベルで主体性を持つべきなのか、どの点が自分に不足していて、どれだけ頑張ればいいのか…がなるべく明確になるような設計になっています。
ー次にベテランの評価制度に関して教えてください。
まずベテランは、新人に適用される16項目を全てクリアしていることが前提です。その為、目標の設定は個別に行われ、上長との評価面談の際に達成すべき目標を設定し、これをクリアしたかどうかで成果を判断します。
大切にしていることは「極力、定量目標にすること」。上長との面談を通じて、自身の職務や得意分野を基に、業者折衝、安全管理、各種プロセスや利益率改善などの分野で定量化を図ります。
上長との面談を通して決めることによって「個人としての目標」「会社が求める事」を把握できるように努めています。
また、評価の時期は年3回設けております。この回数にも意図がありまして、年1~2回だとどうしても長い工期の案件に携わっている人の評価を吸い上げるタイミングが遅くなってしまうんです。弊社では1月、5月、9月となるべく短い期間で実施をすることで、社員の頑張りをなるべくタイムリーに給与に反映させるようにしています。
ー賞与制度について教えてください。
賞与は年3回(夏、冬、決算)支給しています。賞与については厳密に計算式が決まっており、担当した工事、及びその工事の利益率、評価点などで金額が求められます。過去、もっとも高い成績を収めた方で、一回の賞与で約6カ月分を支給された方がいました。逆に、どれだけ業績が落ち込んだとしても、夏冬合計で最低2カ月の支給を保証しています。
従業員の頑張りを正しく判断することが重要
ーかなり整った評価制度ですね。
はい。この評価制度は社長の本間が、真に従業員の頑張りを評価して利益分配ができるように仕組みを考えて作ったものです。どこかのコンサル企業にお願いしたり、他社の真似をしたのではなく、弊社オリジナルのものになります。一番最初にお伝えしたように、建設業界は総じて労働環境が悪く、そのせいで業界の離職率を上げてしまっています。
労働環境の改善も含めて、人事評価制度は会社施策の中でも大変重要な位置づけです。今の制度が最終的な完成形だとは考えておらず、もし社員から人事評価制度に不満が出た際には、さらに改訂を重ねていき、より社員が心地よく働ける職場を作っていければと考えております。







